- 夏の扉
- made in the moon light
- 月夜にGOODLUCK
- With you
- Blue Line
- 言い訳〜a good excuse〜
- 君の傍らの月
- 静かの海
- 硝子のカーニバル
- night wind
- prologue
89.9.21(cs)
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晴れた満月の夜に、一人で車を走らせる。今日はロング・ドライブだ。
こんな夜にぴったりの音は・・・とCDとセットする。”ピッ”という
軽やかな反応音と同時に始まるのは、「月夜にGOODLUCK」、岩崎良美
の1年10ヶ月ぶりのオリジナルだ。テーマは月。月明かりが差し込む
車内に柔らかいメロディが流れ出すと、そこには夜との一体感しかなく
なる。車もまばらな田舎道、束縛するものは、何もない。タコメーター
の針を、エンジンの音が一番落ち着く2300回転にキープして、”傍ら
の月”と一緒に走る。先を急ぐ車に何台も抜かれたけれど、今夜は気に
ならない。胸の奥が酸っぱくなるような懐かしいボーカルに溶け込んで
いると、誰もいないはずのサブシートで不意に声がした。
「ずいぶん久しぶりね。」
それは、長いこと会っていない同級生の声のような気がした。僕は、
この現象が、月夜と流れてくるボーカルの悪戯だということが分かって
いたけれど、わざと車を遠回りさせてもう少しこの状況を楽しむことに
した。
「貴方は変わらないわね。」
そんな彼女の言葉が褒め言葉なのかどうかは、流れてくるメロディが
教えてくれた。彼女はずいぶん恋に悩んだらしい。
「君は、ずいぶん変わったね。」
「いいえ、回りが私を変えたがっているのよ。」
僕は、ずっと彼女の事を知っていたつもりだったが、しばらく会わない
あいだに、こぼれる笑顔にふっきれたものをルームミラー越しに、感じ
た気がした。
「いつか、こんな事があったね。」
そんな彼女の言葉に返す言葉を捜そうとしたとき、不意な前のブレーキ
でふっと我に帰った。窓を開け夜の風を呼び込んだ。何時しか月も高く
なっていた。心地よいデジャ・ブを感じながら、トラック・ナンバーを見
ると、No.11。"あなたと 会うまでの 遠回りを してきて 良かった”
yoshimiのボーカルが彼女の笑顔にだぶる。
No.11のプロローグがフェード・アウトする頃、車は、僕の甘い感傷と
ともに、月明かりよりうるさい水銀灯の波に吸い込まれていった・・・。
(nanba city)
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